塩狩峠
Daisaku on Feb 28th 2009

旭川を出て30分。ディーゼルエンジンの音は徐々に低く、唸るように響き始めた。車窓の左右に林が迫ってくる。稚内行きの特急列車は、石狩と天塩を隔てる塩狩峠に差しかかっていた。
100年前の今日、1909年(明治42年)2月28日夜。名寄を発ち、旭川に向かっていた上り旅客列車は、塩狩峠の分水嶺で非常事態に遭遇する。最後尾の客車の連結が外れ、峠を逆行して下り始めたのである。乗客としてこの車両に乗っていた鐵道院の職員が気づき、手ブレーキを操作して暴進を防ごうとするが叶わない。刻一刻と加速してゆく客車を止めるため、遂に彼は自ら線路に身を投じ、乗客の命を救うことを決意する―。

彼の信仰や、鉄道員としての使命感が、どれほどの影響を与えたかはわからない。しかし乗客全員を悲劇から救った献身の精神は、いまも多くの人の胸を打つ。乳白色に傾き始めた午後の光がほのかに明るく照らす中、ディーゼル特急は峠を下りはじめていた。エンジン音が力強さを取り戻し、列車はスピードを上げていった。
夜明けの海岸
Daisaku on Feb 23rd 2009

夜が明ける。日高山脈が太平洋に落ち込んでゆく険しい海岸線に、打ち寄せる波頭が白く浮かび上がりはじめた。ディーゼルカーは酷寒地仕様の二重窓で、レンズをまっすぐ押し当てても車内の明かりが映りこんでしまう。あきらめてデッキへと出る。車端部の激しい揺れに気を使いながら、ドアの窓にカメラを近づける。ズームレンズを広角側に引いて、空と海を大きく画面に取り込む。ファインダーを横切って鳥が一羽。その姿を追って黒い群れが続く。徐々に雲の量感がはっきりと見え始めて、やがて朝日が空に赤みを加えてゆく。
